その瞬間、勝者は雄たけびをあげ、拳をしっかりと握った。ソチ五輪シーズン後一時不調に陥った苦労人がついに初タイトルをつかみ取った。

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ショートトラック全日本選手権、男子は渡辺啓太(阪南大)が1500m2位、500mと1000mで1位となり、3000mスーパーファイナルを待たずして初の頂点にたった。

今年の男子は選手の実力差が拮抗しており準々決勝以降は各組が激しいレースになっていた。
1500mでは準決勝1組で小山陸(関西学院大)、齋藤悠(株式会社フォーカスシステムズ)、横山大希(トヨタ自動車)らが激しく競り合う中吉永が抜けだし決勝進出。横山や小山が接触により遅れる中横から抜かし2着になったのは三澤夏陽(阪南大)だった。2組も激しい接触で渡邉瑠(立教大学)、岩佐暖(神奈川大学)らが転倒や失速。
3組も渡邉と坂爪が危なげなく通過する中、桜井雄馬(大阪シーリング印刷)と松津秀太(秀明栄光高校)が接触し転倒。松津はペナルティとなった。

決勝は坂爪、渡辺、吉永と他の3選手の実力差がくっきりと浮き彫りになる展開に。坂爪が抜け出し渡辺や吉永が追いかける展開となると最後はゴール勝負に。結局坂爪が逃げ切り優勝。渡辺が2位、吉永が3位となった。IMG_0279

続く500mはこの種目が得意な村竹崇行(島田病院)や小黒義明(三菱電機)がいきなり予選敗退する事態に。
小黒は1000mも予選敗退となり散々な結果になった。また準々決勝では村竹啓恒が敗退。この種目の第一人者坂下里士も準決勝で転倒し敗退となった。
この結果決勝は渡辺、坂爪、吉永、横山とくしくも500mが本職ではない選手たちの争いに。序盤はこの種目で大会記録を連発していた横山が前にでるが 渡辺が前に出るとそのまま逃げ切り優勝。大きな雄たけびとともにド派手なガッツポーズで喜びを爆発させた。

1000m。ここでしぶとい働きを見せたのは桜井雄馬と村竹崇行の大阪勢のベテラン2人。桜井は家族の大声援を後押しに準決勝で松津や三澤を終盤で逆転。2着で準決勝に進む。村竹崇は弟の村竹啓、吉永、岩佐という死の組に入ったが最後まで先頭で滑り切り準決勝進出。村竹啓も最後に吉永や岩佐をかわし2着で準決勝に進んだ。吉永は前に出るタイミングを誤りここで敗退。大会2連覇は絶望的になった。
 
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準決勝、またしても村竹崇が先頭で滑り切り決勝進出を決めると2位争いは坂爪と後方から追い上げきた桜井というチームメイトの争いに、焦った坂爪がゴール直前で桜井を押してしまいペナルティ。桜井が決勝進出となり坂爪は総合優勝が厳しくなった。これを見た村竹啓。渡辺には及ばずとも兄に負けじと2着で決勝へとすすむ。
決勝は先行逃げ切り型の村竹が前にでるが渡辺がすぐに抜け出し逃げ切り優勝。500mとの2冠、1500mの2位とあわせてこの時点で総合優勝を確定させた。村竹崇が2位に入りナショナルチームへの復帰が確定。3位はゴール争いとなったが最初に先行していた桜井が追い上げた村竹啓を抑えて3位に入り家族の期待に応えた。

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最後の種目3000mスーパーファイナル。 まず昨年3月のジャパントロフィーで優勝した横山がそのときの再現とばかりに飛ばすがほかの選手もこれを追う作戦に出たため断念。しかし序盤は横山がレースを引っ張った。中盤は渡辺と坂爪が横山とともに先頭争い。ここでチャンスをうかがっていたのは吉永だった。
ラストで一気に先頭に出るとそのままゴール。喜びを爆発させた。これで吉永が総合2位に浮上。坂爪が3位、横山が4位、村竹崇が5位、6位は齋藤慧(神奈川大学)で桜井は7位だった。

男子は渡辺、坂爪、吉永、横山の4人が軸となりそう。得意な種目だけでなく短距離でも勝てるようスピードを強化したことが総合上位に繋がった一方500mが得意な村竹啓、岩佐、小黒、坂下らが軒並み脱落。また、本来短距離型だが長距離でも結果が出るようになった齋藤慧が勝ち残り全種目の大切さを感じさせる結果となった。

全てのレースが終わり、渡辺充実した表情を見せていた。苦手種目を制して掴んだ久々の大阪の選手の総合優勝は今後の飛躍を期待させるものとなった。